ビジネス英語ドラマ 第1話 / 全10話 DAY 1 / 90

会議への割り込み方

第1話「着任初日の洗礼」/Interrupting — Getting the Floor

この回の状況

TOEIC850。読めるし書ける。それでも90分の会議で、健司が発した言葉は二つだけだった。

日本の中堅IT企業セイワテクノロジーズが北米に投入したSaaS「MIRAI Field」は、90日解約率31%という数字を前に立て直しを迫られている。東京から着任した佐藤健司に与えられた猶予は90日。その初日、健司は週次プロダクト定例で三度発言を試み、三度とも失敗する。

この回の目標週次プロダクト定例で、一度でいいから議論に入る失敗(3回試みて3回とも流される)

登場人物

  • 健司Kenji Sato主人公。東京から出向したプロジェクトマネージャー(32歳・TOEIC850)
  • サラSarah Miller新規事業開発部 部長。健司を引き抜いた人。遠回しな英語の使い手
  • マークMark Stevensシニア・プロダクトマーケター。速い議論で場を引っぱる
  • エレナElena Rodriguezリード・プロダクトデザイナー。ユーザー視点を最優先する
  • デビッドDavid Chenファイナンス・リード。ROIとリスクで判断する
  • プリヤPriya Sharmaカスタマーサクセス・マネージャー。インド出身・在米6年
  • リチャード・ヘイルRichard HaleCOO。最終プレゼンの可否を決める

健司の英語は、どこも間違っていません

  1. 14

    Excuse me —

    音量が小さく、続きがない。英語の会議では、途中でやめた発言は「なかったこと」になる。

  2. 18

    May I say something about the churn number that Mark mentioned before?

    12語。言い終わるまでに3秒かかる。英語の議論に3秒の空白はない。しかも「マークが前に言った」と2つ前の話題に戻しているため、聞き手には「今の話ではない」と処理される。

  3. 31

    I'd like to study it and give my opinion next week.

    最悪の一言。丁寧だが、内容は「今は意見がない」という宣言そのもの。サラの言葉を借りれば、口に出さなかったことは、考えなかったことになる。

三つとも、文法は完璧です。問題は英語力ではなく、長さと、タイミングと、順番でした。

この回のキーフレーズ6本

上が健司の英語(文法は正しいのに会議では通らない)、下が同じ場面で通る言い方です。

1 議論が続いていて誰も止まらないとき。最初の一言として。

NGExcuse me. May I say something about the churn number that Mark mentioned before?

すみません。先ほどマークが言った解約率の数字について、何か申し上げてもよろしいでしょうか。

12語。言い終わるまでに話題が動く。しかも過去の話題に戻している。

OKSorry, can I jump in here?

すみません、ちょっといいですか?直訳「ここに飛び込んでもいいですか」

5語。息継ぎなしで言い切れる。そして中身をまだ言っていないのが最大の特徴。先に「入る許可」だけを取り、内容は入ってから考える。

言い換え

  • Sorry, can I jump in?
  • Can I add something here?
  • Can I come in on that?

本編43番で実際に使われています

2 相手が話し終える寸前に、短い確認を差し込みたいとき。

NGDo you have time for my question?

私の質問の時間はありますか?

時間があるかどうかの判断を相手に渡している。忙しい会議で聞けば答えはノーになる。

OKCan I jump in real quick?

ちょっとだけいいですか?直訳「ほんの少しだけ飛び込んでもいい?」

real quick が「すぐ終わる」を先に保証する。許可を求める形をしているが、実際には終わりの時刻を宣言している。

言い換え

  • Real quick —
  • Quick one:
  • One quick thing —
3 直前の発言に関連づけて主張を出したいとき。反対意見のときほど効く。

NGI have a different opinion.

私は違う意見です。

新しい話題の宣言なので「後で」と止められる。冒頭で対立を宣言するため聞き手も身構える。

OKJust to build on what Mark said, ...

マークの話に乗せる形で言うと、直訳「マークが言ったことの上に積むだけですが」

「今の話の続き」として入るので、止める理由が誰にもない。しかも中身が反対でも使える。入り口で乗って、着地で別の方向へ持っていける。

言い換え

  • Building on that, ...
  • To add to what David said, ...
  • That connects to something I wanted to raise.
4 話題が次へ移りかけていて、その前に戻したいとき。

NGPlease wait. I did not understand.

待ってください。理解できませんでした。

命令形で場を止め、そのうえ自分の理解力の問題として宣言してしまっている。

OKBefore we move on, I want to make sure I've got this right.

先に進む前に、認識が合っているか確認させてください。直訳「進む前に、これを正しく取れているか確かめたい」

主語は I、動作は「確認」。誰も責めていないのに議事は止まる。Before we move on が話題の移動を先に押さえるので、割り込みの中でも最も強い。

言い換え

  • Before we move on — one thing.
  • Can we stay on this for one more minute?
  • I want to make sure I'm tracking.

本編23番で実際に使われています

5 話している途中で遮られたとき。1秒以内に。

NGAh... okay.

あ……はい。(譲ってしまう)

日本語なら譲るのは礼儀。英語の会議では「言うことがなかった」と記録され、次から割り込んでよい相手だと認識される。

OKSorry, I wasn't finished.

すみません、まだ終わっていません。直訳「すみません、私は終わっていませんでした」

4語。sorry が付いているので攻撃にならず、wasn't finished は事実の報告なので反論の余地がない。

言い換え

  • Sorry, let me finish.
  • Hang on — I wasn't done.
  • One second, I want to finish this.
6 5番で止めたあと、続きに入る合図として。2つセットで使う。

NGI want to say more.

もっと言いたいです。

want は願望なので、許可の権限を相手に渡している。「もっと」は量の話で、何を言うのかが伝わらない。

OKLet me finish that thought.

最後まで言わせてください。直訳「その考えを終わらせてください」

Let me は許可を求める形をしているが、実際にはそのまま続ける宣言。that thought と名詞で区切ることで「あと少しで終わる」と伝わり、聞き手が待ってくれる。

言い換え

  • Let me just finish this thought.
  • Give me thirty seconds to land this.
  • I'll be quick — two more sentences.

発音のポイント can I

/kən aɪ/ → /kə.naɪ/カナイ

Sorry, can I jump in here?ソーリ・カナイ・ジャンピン・ヒア

  • can は弱くなる:can は機能語なので、文の中では「キャン」ではなく /kən/ と弱く読まれる
  • I とつながる:/kən/ の n が次の I とくっついて /kə.naɪ/ =「カナイ」になる
  • jump in も同じ:jump in の p が落ちて n と in がつながり「ジャンピン」

「キャン・アイ」という音を探しているかぎり、この5語は一生聞こえません。

本編スクリプト(全48発言)

英語を読んでから和訳で確認してください。印は KEY=覚える表現、NG=文法は正しいのに通らない英語、 SOFT=本音を包んだ遠回しの言い方です。

場面1 着任の朝本社34階 ロビー / 8:40 AM

1サラ

Kenji. Welcome to New York. How was the flight?

健司。ニューヨークへようこそ。フライトはどうだった?

2健司NG通らない硬すぎる

Thank you very much, Ms. Miller. It was very comfortable. I am very happy to be here.

ありがとうございます、ミラーさん。とても快適でした。ここに来られてとても嬉しいです。

文法は完璧。でも同僚同士でこの距離感は使わない

3サラ

Sarah. Nobody in this building is going to call me Ms. Miller. Okay — product sync in twenty minutes. I'm not going to introduce you.

サラでいい。このビルで私をミラーさんと呼ぶ人はいないから。さて、20分後にプロダクト定例。私はあなたを紹介しない。

4健司

You will not introduce me?

紹介、されないんですか?

5サラKEY覚える

If I introduce you, you're my hire. If you introduce yourself, you're a person in the room. Big difference.

私が紹介したら、あなたは「私が採った人」。自分で名乗れば、あなたは「その場にいる一人」。全然ちがう。

その場にいる一人になる ― 紹介されるのを待たない

6サラKEY覚える

One more thing. In that room, if you don't say it, you didn't think it.

もう一つ。あの部屋では、口に出さなかったことは、考えなかったことになる。

口に出さなかったことは、考えなかったことになる

7健司

I understand.

わかりました。

8サラSOFT遠回し遠回し

We'll see.

どうかしらね。

本音は「まだ信じていない」。同意ではなく保留の宣言

場面2 週次プロダクト定例会議室 34-B / 9:00 AM

9プリヤ

Alright, we're at nine. MIRAI Field — week one of the reset. Mark, you're up.

はい、9時になりました。MIRAI Field、立て直し1週目。マーク、お願い。

10マーク

Thanks. So — churn. Ninety-day churn is at thirty-one percent. Thirty-one. That is not a product problem, that's a positioning problem, and I have been saying that since March.

どうも。えー、解約率。90日解約率が31パーセント。31だぞ。これはプロダクトの問題じゃない、ポジショニングの問題だ。3月からずっとそう言っている。

11エレナ割り込み

It's not positioning. Nobody gets through setup. Have you watched a single onboarding session?

ポジショニングじゃない。誰もセットアップを終えられないの。オンボーディングを一度でも見たことある?

12マーク

I've watched four.

4回見た。

13エレナ

Then you saw them quit at screen three.

じゃあ3画面目で離脱してるのも見たはずでしょ。

14健司NG通らない失敗①

Excuse me —

すみません——

声が小さく、続きがない。誰も気づかないまま流れる

15デビッド

The number I care about is CAC payback. Nineteen months. At nineteen months this doesn't get funded past Q3, no matter whose fault it is.

私が気にしている数字はCACの回収期間だ。19か月。19か月なら、誰のせいであろうとQ3から先の予算は付かない。

16マーク

Right, which is exactly my point —

そう、まさにそれが俺の言ってることで——

17エレナ割り込み

It's not your point, Mark. It's David's point.

それはあなたの論点じゃない、マーク。デビッドの論点でしょ。

18健司NG通らない失敗②

Excuse me. May I say something about the churn number that Mark mentioned before?

すみません。先ほどマークが言った解約率の数字について、何か申し上げてもよろしいでしょうか。

12語。言い終わる前に話題が動く。しかも2つ前の話に戻している

19プリヤ

Sorry — go ahead. Sorry, what was that?

ごめんなさい——どうぞ。ごめん、今なんて?

20マーク流される

Hang on, hang on. Before we go back — Priya, do we have the Q2 win-loss? Because if the losses are all price, this whole conversation is over.

待った、待った。戻る前に——プリヤ、Q2の受注失注データある? 失注が全部価格なら、この議論は終わりだ。

21プリヤ

I have it. Give me one second.

あるわ。ちょっと待って。

22健司NG通らない

(健司は口を開いたが、声にならなかった)

ここが分岐点。次の3秒で入れなければ、この90分は終わる

23サラKEY覚える手本

Mark — before Priya pulls that up. Is thirty-one percent a full-year figure, or trailing ninety days?

マーク——プリヤが出す前に。31パーセントは通年の数字? それとも直近90日?

名前で止めて、次の動作が起きる前に押さえる

24マーク

Trailing ninety.

直近90日だ。

25サラ

Then it's worse than it looks. Keep going.

なら見た目より悪いわね。続けて。

26エレナKEY覚える割り込み

Can I jump in? Because we keep doing this. We keep arguing about why they leave, and nobody has asked the ones who stayed.

ちょっといい? だって毎回これなの。なぜ辞めるかで言い争って、残ってくれた人には誰も聞いていない。

4語。中身を言う前に、先に「入る」だけを取る

27デビッド

How many stayed?

残ったのは何社だ?

28エレナ

Forty-one accounts. Thirteen months, zero churn.

41アカウント。13か月、解約ゼロ。

29マーク

Forty-one out of six hundred is noise.

600のうち41はノイズだ。

30プリヤ

Okay — we're at nine-forty. Kenji. You've been in the room the whole time. Anything?

さて、9時40分。健司。ずっとこの場にいたわね。何かある?

31健司NG通らない失敗③

I... I think Mark's data is very interesting. I would like to study it carefully and give my opinion next week.

えっと……マークのデータはとても興味深いと思います。よく検討して、来週意見を申し上げたいと思います。

最悪の一言。「今は意見がない」と自分から宣言している

32マークSOFT遠回し遠回し

Sure.

どうぞ。

本音は「聞くだけ聞いた」。この Sure に中身はない

33プリヤ

Okay. Same time Thursday. Elena, send me the session recordings.

はい。木曜、同じ時間で。エレナ、セッションの録画を送って。

場面3 廊下、そしてエレベーター34階 廊下 / 10:05 AM

34サラ

Ninety minutes. You spoke twice, and one of them was "excuse me."

90分。あなたが話したのは2回、うち1回は「すみません」だった。

35健司

I'm sorry. Everyone was speaking very fast, and every time I prepared my sentence, the topic changed.

すみません。皆さん話すのがとても速くて、文を用意するたびに話題が変わってしまって。

36サラKEY覚える

Kenji. Nobody in that room is waiting for your sentence to be finished. They're waiting for it to start.

健司。あの部屋の誰も、あなたの文が完成するのを待ってはいない。始まるのを待っているの。

完成した文を待つ人はいない。始まりだけが待たれている

37サラSOFT遠回し遠回し

You have ninety days. I can't protect a project I can't hear.

あなたには90日ある。私は、声の聞こえないプロジェクトは守れない。

本音は「発言しないなら、あなたは守れない」という最後通告

38サラ

Thursday. I need to hear you in that room.

木曜。あの部屋であなたの声を聞かせて。

39プリヤ

Hey. Kenji, right? Priya.

ねえ。健司、よね? プリヤよ。

40健司

Yes. I'm sorry about the meeting. My English is —

はい。会議はすみませんでした。私の英語が——

41プリヤKEY覚える取り返す

Your English is fine. I've been here six years and I still say "how do you say" twice a day. That's not what happened in there.

英語は問題ないわ。私は6年いるけど、今でも1日2回は「なんて言うんだっけ」って言ってる。あの部屋で起きたのはそれじゃない。

問題は英語力ではない。起きたことは別のこと

42プリヤKEY覚える

You were waiting for a gap. There is no gap. You have to take one.

あなたは「間」が空くのを待っていた。間なんて空かない。自分で取るの。

間は空かない。自分で取る ― この動画の結論

43プリヤKEY覚える本日の型

Five words. "Sorry, can I jump in?" That's it. Say it before you know what you're going to say.

5語よ。"Sorry, can I jump in?" それだけ。何を言うか決まる前に言うの。

すみません、ちょっといいですか ― 中身が決まる前に言う

44健司

Before I know what I'm going to say?

何を言うか決まる前に、ですか?

45プリヤ

Especially before. See you Thursday.

決まる前だからこそ。木曜にね。

46リチャード・ヘイル

Going down? ... You're the new PM from Tokyo.

下ですか? ……君が東京から来た新しいPMだね。

47健司NG通らない

(健司は答えられなかった)

初日、最後の一言も出なかった

48リチャード・ヘイルKEY覚える

Richard. Good luck with the ninety days.

リチャードだ。90日、頑張って。

健司はまだ、この人物がCOOだと知らない

練習

まずはキーフレーズ6本を、声に出して2回ずつ。息継ぎなしで言い切れるまで繰り返します。

口の形ソーリ・カナイ・ジャンピン・ヒア

ロールプレイ

状況を読んで、自分の英語を口に出してから答えを見てください。

場面1マークがデータの話を続けている。その数字の出どころを、今すぐ確認したい。キーフレーズ1

Sorry, can I jump in here? Where is that number from?

すみません、ちょっといいですか。その数字はどこから来ていますか?

場面2あなたが話している途中で、エレナが割り込んできた。取り返したい。キーフレーズ5

Sorry, I wasn't finished. Let me finish that thought.

すみません、まだ終わっていません。最後まで言わせてください。

場面3デビッドの発言に乗せる形で、自分の提案を出したい。キーフレーズ3

Just to build on what David said, I'd like to look at the accounts that stayed.

デビッドの話に乗せて言うと、私は残っているアカウントを見たいです。

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