ビジネス英語ドラマ 第10話 / 全10話 DAY 90 / 90

人を動かすプレゼンとQ&A

第10話「運命の最終プレゼン」/The Ask — Presenting and Surviving Q&A

この回の状況

90日目。健司は数字からではなく、解約しなかった顧客の一言から始めた。

着任90日目。COOリチャード・ヘイルの前で、MIRAI Field の Go / No-Go が決まる。健司の資料は3枚になった。1枚目は依頼、2枚目は録音、3枚目は数字。第1話で一言も返せなかったエレベーターに、健司はもう一度乗ることになる。

この回の目標COOリチャード・ヘイルから、Go の判断を取る成功(採用2名・6か月契約、1〜4画面目をロードマップに維持)

登場人物

  • 健司Kenji Sato主人公。東京から出向したプロジェクトマネージャー(32歳・TOEIC850)
  • サラSarah Miller新規事業開発部 部長。健司を引き抜いた人。遠回しな英語の使い手
  • マークMark Stevensシニア・プロダクトマーケター。速い議論で場を引っぱる
  • エレナElena Rodriguezリード・プロダクトデザイナー。ユーザー視点を最優先する
  • デビッドDavid Chenファイナンス・リード。ROIとリスクで判断する
  • リチャード・ヘイルRichard HaleCOO。最終プレゼンの可否を決める

90日前なら、こう言っていました

  1. 2

    Today I would like to talk about the background of the MIRAI Field project.

    第9話で3分で止められた出だし。背景から始めると、聞き手は「で、私は何をすればいいのか」が分からないまま20分を過ごす。英語のプレゼンは、依頼を最初に置く。

  2. 13

    I hope you will consider our proposal positively.

    何を求めているのかが無い。前向きにご検討ください、は依頼ではなく願望で、聞いた側は何も決められない。So what I'm asking for today is で、必ず具体を言い切る。

  3. 23

    Well... probably about... maybe fifteen percent?

    知らない数字を推測で埋めた瞬間、その資料の全部の数字が疑わしくなる。役員はその数字を取締役会に持っていく。推測を持たせるくらいなら、期限を切って後で送るほうが百倍いい。

三つとも丁寧です。そして三つとも、相手に何も頼んでいません。

この回のキーフレーズ6本

上が健司の英語(文法は正しいのに会議では通らない)、下が同じ場面で通る言い方です。

1 プレゼンの冒頭。最初の一文として。

NGToday I would like to talk about the background of the project.

本日はプロジェクトの背景についてお話しします。

背景から始めると、聞き手は最後まで「で、私は何をすればいいのか」が分からない。

OKHere's the one thing I want you to remember.

一つだけ覚えて帰っていただきたいことがあります。直訳「これが、あなたに覚えていてほしい唯一のことです」

冒頭で結論を1つに絞る型。one thing と言い切ることで、聞き手は「これだけ覚えればいい」と分かり、緊張を解いて聞ける。そしてこの宣言は自分への縛りにもなる。一つに絞れないなら、そのプレゼンはまだ整理できていない。20分の枠でも、最初の15秒でこれを言う。

言い換え

  • If you take one thing from this —
  • The headline is this:
  • Everything else is detail. This is the point.

本編2番で実際に使われています

2 聞き手が懐疑的だと分かっているとき。本題に入る二文目で。

NGFirst, let me explain the market situation in North America.

まず、北米市場の状況をご説明します。

説明から入っている。聞き手は情報を受け取る側に固定され、当事者にならない。

OKLet me start with the number that changed my mind.

私の考えを変えた数字から始めます。直訳「私の考えを変えた数字から始めさせてください」

自分が動かされた話から始める型。changed my mind が肝で、これは「私も最初は違う考えだった」と認めていることになる。聞き手は説得されているのではなく、同じ発見を追体験する側に回る。反対の立場にいる相手ほど効く。数字そのものより、その数字で自分が変わったという事実のほうが強い。

言い換え

  • Here's the number that made me stop.
  • I didn't believe this either until I saw it.
  • This is the slide that changed the plan.

本編4番で実際に使われています

3 プレゼンの締め。質疑応答に入る直前に。

NGI hope you will consider our proposal positively.

前向きにご検討いただければ幸いです。

依頼ではなく願望。聞いた側は何を決めればいいのか分からず、その場では何も決まらない。

OKSo what I'm asking for today is ...

本日お願いしたいのは、次のことです。直訳「つまり、私が今日お願いしているのは……」

依頼を明示して締める型。第9話でマークが指摘した「全部が背景で依頼が無い」への直接の回答。asking for のあとには、必ず数えられるものを置く。採用2名、ロードマップ維持、のように、その場でイエスかノーが言える形にする。ここが曖昧だと、どれだけ良い話でも決裁は次回に流れる。

言い換え

  • The ask is two things:
  • What I need from you today is a decision on X.
  • Concretely: I'm asking for X and Y.

本編13番で実際に使われています

4 複数の論点を含む質問を受けたとき。

NGThat is a difficult question. Well... how can I say...

難しい質問ですね。えー、なんと言いますか……

difficult と言った時点で、答えられないと宣言している。しかも間が空いて印象が悪い。

OKGreat question — let me take that in two parts.

良い質問です。二つに分けてお答えします。直訳「良い質問です。それを二つの部分に分けさせてください」

複雑な質問を構造化して受ける型。two parts と宣言すると、聞き手は答えの長さを予測でき、こちらは話す順番を決める時間を稼げる。実際に二つに分ける必要は必ずしもなく、大事なのは「整理して答える人」という印象。ただし三つ以上にはしないこと。three parts と言うと、聞き手は最後まで待てなくなる。

言い換え

  • Two things there —
  • Let me separate those.
  • There are two questions in that. The first one is ...

本編18番で実際に使われています

5 手元に無い数字や事実を聞かれたとき。

NGWell... probably about... maybe fifteen percent?

えー、たぶん……15パーセントくらい、でしょうか?

推測で埋めた瞬間、その資料の全部の数字が疑わしくなる。しかも役員はそれを持ち帰る。

OKI don't have that number in front of me. I'll get it to you by end of day.

その数字は手元にありません。本日中にお送りします。直訳「その数字は目の前にありません。今日の終わりまでにお届けします」

知らないことを堂々と言う型。ただし言い切りで終わらせず、必ず期限を付けるのが肝。in front of me は「手元に無いだけ」という含みで、無能ではなく準備の範囲外だと伝わる。ヘイルが correct answer と言ったのは、推測を役員会に持ち込ませなかったから。ちなみに健司は最後、期限を自分から1時間前倒ししている。

言い換え

  • I don't want to guess on that. Let me send it this afternoon.
  • I'll have to check. You'll have it by three.
  • I don't know. I'll find out today.

本編23番で実際に使われています

6 痛いところを突かれたとき。備えがあるとき。

NGThat will not be a problem. Please do not worry.

それは問題になりません。ご心配なく。

否定と安心の押し売り。相手の懸念を軽く扱っているので、かえって不安が残る。

OKThat's exactly the risk we're managing. Here's how.

まさにそれが、我々が管理しているリスクです。方法を申し上げます。直訳「それはまさに我々が管理しているリスクです。これがその方法です」

攻撃を想定内に変える型。exactly が効いていて、これは「あなたの指摘は鋭い、そしてこちらは既に手を打っている」という二重のメッセージになる。反論しないので相手は守りに入らず、Here's how のあとの中身だけを聞いてくれる。逆に言えば、手を打っていないときには使えない。使うためには、最も痛い質問を事前に自分で挙げておく必要がある。

言い換え

  • That's the main risk, yes. Here's the mitigation.
  • You've found the weak point. Here's what we did about it.
  • Fair — and here's how we've bounded it.

本編28番で実際に使われています

発音のポイント I'll get it to you

/aɪl get ɪt tuː juː/ → /aɪl gedɪt tə jə/アイル・ゲディットゥヤ

I'll get it to you by end of day.アイル・ゲディットゥヤ・バイエンダヴデイ

  • get it が「ゲディッ」:t が母音に挟まれて弾き音になり、日本語の「ダ」行に近い音になる
  • to you が「トゥヤ」:どちらも機能語なので弱まり、ひとつの短い音に潰れる
  • end of day が「エンダヴデイ」:end の d と of がつながる。3語で1つの塊

質疑応答で最も多く使う一文です。ここが崩せると、応答が速くなります。

本編スクリプト(全48発言)

英語を読んでから和訳で確認してください。印は KEY=覚える表現、NG=文法は正しいのに通らない英語、 SOFT=本音を包んだ遠回しの言い方です。

場面1 3枚の資料役員会議室 40-A / 10:00 AM

1リチャード・ヘイル

Twenty minutes. I have a hard stop.

20分だ。時間は延ばせない。

2健司KEY覚える本日の型

Then let's use them well. Here's the one thing I want you to remember: the customers who stayed all did the same thing in week one.

では有効に使いましょう。一つだけ覚えて帰っていただきたいことがあります。解約しなかった顧客は全員、1週目に同じことをしていました。

冒頭で結論を1つに絞る。背景から始めない

3リチャード・ヘイル

Go on.

続けて。

4健司KEY覚える

Let me start with the number that changed my mind. Not thirty-one percent churn. Thirty-eight.

私の考えを変えた数字から始めます。31パーセントの解約率ではありません。38です。

自分が動かされた話から始める。説得ではなく共有になる

5リチャード・ヘイル

Thirty-eight what?

38の何だ?

6健司

Thirty-eight of the forty-one accounts that renewed. All of them had a forty-minute setup call in week one. With a human being.

更新した41アカウントのうち38件です。全員が1週目に40分の設定通話を受けています。人間と。

7健司

Slide two is one of those calls. Fourteen seconds.

2枚目はその通話の一つです。14秒です。

8健司

"...honestly, we almost cancelled in week one. Then someone from your team called and set it up with us. That's the only reason we're still here."

「……正直、1週目で解約寸前でした。そこへ御社の方から電話があって、一緒に設定してくれたんです。うちが今も使っている理由はそれだけです」

9リチャード・ヘイル

Who made that call?

その電話をしたのは誰だ?

10健司

Priya. Forty-one times, on her own initiative, with no budget line.

プリヤです。41回、自分の判断で、予算の項目も無いまま。

11健司

Slide three is the number. Assisted onboarding costs us two hundred and ten dollars per account. It returns nine thousand four hundred in retained annual revenue.

3枚目が数字です。設定支援のコストは1アカウントあたり210ドル。維持できた年間売上は9400ドルです。

12デビッド

I've checked that model. It holds at scale up to about four hundred accounts.

そのモデルは確認した。400アカウント規模までは成立する。

13健司KEY覚える

So what I'm asking for today is this: two customer success hires, and screens one through four stay in the roadmap for Q3.

本日お願いしたいのは次の2点です。カスタマーサクセスの採用を2名。そして1から4画面目をQ3のロードマップに残すこと。

依頼を明示して締める。第9話の「依頼が無い」への回答

14リチャード・ヘイル

That's it? That was six minutes.

それだけか? 6分だぞ。

15健司

That's it. The rest of the time is yours.

それだけです。残りの時間はそちらのものです。

16リチャード・ヘイルSOFT遠回し

Hm. Most people use all twenty.

ふむ。たいていの人間は20分全部使う。

本音は「珍しい」。ヘイルが前に乗り出したのはここから

場面2 質疑応答役員会議室 40-A / 10:12 AM

17リチャード・ヘイル

Question. Why didn't anyone find this in nine months?

質問だ。なぜ9か月間、誰もこれを見つけなかった?

18健司KEY覚える

Great question — let me take that in two parts. What we measured, and who we asked.

良い質問です。二つに分けてお答えします。何を測っていたか、そして誰に聞いていたか。

複雑な質問を構造化して受ける。時間も稼げる

19健司

We measured why people left. We never asked why people stayed. Those are different data sets, and only one of them was collected.

我々は、なぜ人が去るかを測っていました。なぜ残ったかは一度も聞いていません。別のデータで、集められていたのは片方だけでした。

20リチャード・ヘイル

And the second part?

二つ目は?

21健司

We asked analytics. We never asked the person who was on the phone.

我々は分析チームに聞いていました。電話に出ていた本人には、一度も聞いていません。

22リチャード・ヘイル

What's the churn number for the accounts that got the call, over eighteen months?

その通話を受けたアカウントの、18か月での解約率は?

23健司KEY覚える

I don't have that number in front of me. I'll get it to you by end of day.

その数字は手元にありません。本日中にお送りします。

知らないことを堂々と言う。ごまかすより信頼される

24リチャード・ヘイル

You don't want to guess?

推測してみないのか?

25健司

I could guess. But you'd carry my guess into a board meeting, and I'd rather you carry a fact.

推測はできます。ですがあなたはそれを取締役会に持っていく。推測ではなく事実を持っていっていただきたいです。

26リチャード・ヘイル

(pause) Correct answer.

(間)正しい答えだ。

27リチャード・ヘイル

Here's my real concern. Two hires is a permanent cost against a temporary problem.

本当の懸念はこれだ。2名の採用は恒久コストだ。それを一時的な問題にぶつけている。

28健司KEY覚える

That's exactly the risk we're managing. Here's how. Both hires are on six-month contracts, and screen four automates the call by Q4 — at which point we don't renew them.

まさにそれが我々が管理しているリスクです。方法を申し上げます。2名とも6か月契約で、4画面目がQ4までにその通話を自動化します。その時点で更新しません。

攻撃を想定内に変える。反論せずに、備えを見せる

29リチャード・ヘイル

So you're asking me to fund the thing that makes the thing unnecessary.

つまり、それ自体を不要にするものに金を出せと。

30健司

Yes.

はい。

31マーク

For what it's worth — I fought this for six weeks. He's right and I was wrong.

参考までに言うと、俺は6週間これに反対した。健司が正しくて、俺が間違ってた。

32エレナ

Screen two is live. Eleven seconds, end to end. Want to see it?

2画面目は動いています。端から端まで11秒。ご覧になります?

33リチャード・ヘイル

No. If David signed the model and Mark changed his mind, I've seen enough.

いい。デビッドがモデルを承認し、マークが意見を変えたのなら、もう十分だ。

34リチャード・ヘイル

Two hires, six-month contracts. Screens one through four stay. We revisit in Q4.

2名、6か月契約。1から4画面目は残す。Q4に再検討する。

35サラ

Thank you, Richard.

ありがとうございます、リチャード。

36リチャード・ヘイル

Sarah. He did that, not you. I was watching.

サラ。今のは彼がやった。君じゃない。見ていたよ。

場面3 同じエレベーター40階 エレベーターホール / 10:41 AM

37リチャード・ヘイル

Going down?

下かね?

38健司

Going down.

下です。

39リチャード・ヘイル

Ninety days ago I asked you a question in this elevator and you said nothing at all.

90日前、このエレベーターで君に質問して、君は一言も返さなかった。

40健司

I remember. I couldn't find the first four words.

覚えています。最初の4語が見つかりませんでした。

41リチャード・ヘイル

What were they going to be?

何と言うつもりだったんだ?

42健司

"Yes. Kenji Sato." That's four. I had ninety seconds and I couldn't do four words.

「はい。佐藤健司です」。4語です。90秒あって、4語が出ませんでした。

43リチャード・ヘイル

And today you did six minutes and gave me back fourteen.

それが今日は6分で終わらせて、14分返してきた。

44健司

The six minutes were the easy part. The four words took ninety days.

6分のほうは簡単でした。4語のほうに、90日かかりました。

45リチャード・ヘイル

(the doors open) Richard. We've met twice now, and you've told me your name twice.

(扉が開く)リチャードだ。もう2回会っているし、君は2回とも名乗ったな。

46健司

Once. The first time I said nothing.

1回です。最初は何も言えませんでした。

47リチャード・ヘイル

You said nothing out loud. Send me the eighteen-month number by five.

声に出さなかっただけだ。18か月の数字は5時までに。

48健司

By four.

4時までに送ります。

練習

まずはキーフレーズ6本を、声に出して2回ずつ。息継ぎなしで言い切れるまで繰り返します。

口の形ヒアザ・ワンスィン・アイ・ウォンチュー・トゥ・リメンバー

ロールプレイ

状況を読んで、自分の英語を口に出してから答えを見てください。

場面1役員に20分もらった。背景からではなく、結論から始めたい。最初の一文。キーフレーズ1

Here's the one thing I want you to remember.

一つだけ覚えて帰っていただきたいことがあります。

場面2手元に無い数字を聞かれた。推測したくない。キーフレーズ5

I don't have that number in front of me. I'll get it to you by end of day.

その数字は手元にありません。本日中にお送りします。

場面3最も痛いところを突かれた。備えはある。反論せずに見せたい。キーフレーズ6

That's exactly the risk we're managing. Here's how.

まさにそれが、我々が管理しているリスクです。方法を申し上げます。

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