ビジネス英語ドラマ 第7話 / 全10話 DAY 51 / 90

プロフェッショナルな謝罪

第7話「信頼を揺るがすミス」/Owning It — Apology That Actually Works

この回の状況

健司は8回謝った。事態は1ミリも動かなかった。求められていたのは、回数ではなかった。

着任51日目。健司が日本本社から受け取った稼働率のデータは3か月前のものだった。それを確認せずに顧客向け資料へ載せ、プリヤは大口顧客の前で誤った数字を読み上げてしまう。健司は日本式に何度も謝るが、事態は改善しない。求められていたのは謝罪の回数ではなく、事実と、対策と、それがもう動いているという証拠だった。

この回の目標誤った数字による損害を止め、プリヤの信頼を回復する前半は失敗(8回の謝罪)、後半で成功(4か所修正・仕組み導入・CTOへのメール)

登場人物

  • 健司Kenji Sato主人公。東京から出向したプロジェクトマネージャー(32歳・TOEIC850)
  • サラSarah Miller新規事業開発部 部長。健司を引き抜いた人。遠回しな英語の使い手
  • マークMark Stevensシニア・プロダクトマーケター。速い議論で場を引っぱる
  • デビッドDavid Chenファイナンス・リード。ROIとリスクで判断する
  • プリヤPriya Sharmaカスタマーサクセス・マネージャー。インド出身・在米6年

誠実なのに、信頼が戻らない

  1. 6

    I'm so sorry. I'm really sorry. It was the file that Tokyo sent me...

    謝罪を反復したあとに言い訳が続いている。この順番だと、聞き手には「謝ってはいるが自分のせいだとは思っていない」と伝わる。言い訳が一つ入った時点で、その前の謝罪は無効になる。

  2. 12

    I will be more careful next time.

    精神論であって、仕組みが何も変わっていない。相手から見れば同じミスが起きる確率は昨日と同じ。マークの Careful isn't a process. がそのまま答えになっている。

  3. 9

    I would have to check.

    謝罪を先に、被害範囲の把握を後にした。デビッドが最初に聞いたのは「他にどこに出ているか」で、これが実務の第一手。感情の処理より、止血が先に来る。

三つとも、誠実です。ただ英語の職場では、どれも対策として数えられません。

この回のキーフレーズ6本

上が健司の英語(文法は正しいのに会議では通らない)、下が同じ場面で通る言い方です。

1 自分に起因するミスが判明した直後。最初の一言として。

NGI'm so sorry. I'm really sorry. It was the file that Tokyo sent me.

本当にすみません。本当に申し訳ありません。東京から送られてきたファイルで。

謝罪の反復のあとに言い訳。言い訳が一つ入った瞬間、その前の謝罪は全部無効になる。

OKThat one's on me.

それは私の責任です。直訳「その一件は私の上に乗っています」

責任の所在を4語で確定させる型。on me は「私の側にある」で、誰が悪いかの議論をその場で終わらせる。重要なのは回数で、1回だけにすること。1回だけ言うのは軽いのではなく、謝罪を終えてもう作業に入った、という宣言になる。そして絶対に but や because を続けない。

言い換え

  • That's on me.
  • My miss.
  • I own that one.

本編31番で実際に使われています

2 上司や関係者に第一報を入れるとき。

NGI am very sorry for the trouble I have caused everyone.

皆様にご迷惑をおかけして大変申し訳ありません。

情報がゼロ。聞き手は状況も対策も分からないまま、感情の処理だけを求められる。

OKHere's what happened, and here's what I'm doing about it.

何が起きたかと、それに対して何をしているかを申し上げます。直訳「これが起きたことで、これが私がそれについてしていることです」

事実と対策を一文で並べる型。ここで大事なのは and で繋いで一息で言うこと。事実だけで止めると報告になり、対策だけだと隠したように見える。そして事実の側は、自分に不利な情報から先に出す。健司が「3か所ではなく4か所」と自分から訂正したことで、報告の信頼度が上がっている。

言い換え

  • Here's the situation and here's the plan.
  • Two things: what broke, and what I've done.
  • Short version: X happened, Y is in flight.

本編33番で実際に使われています

3 第一報の直後。相手が「で、どうするの」と思っている瞬間。

NGI am planning to fix it as soon as possible.

できるだけ早く修正する予定です。

予定は成果ではない。as soon as possible は期限が入っていないので、何も約束していない。

OKI've already put a fix in place — let me walk you through it.

再発防止はすでに入れました。ご説明します。直訳「すでに修正を所定の位置に置きました。順にご案内させてください」

すでに動いているという証拠を出す型。already と現在完了が効いていて、これは意思表明ではなく完了報告になる。人がミスを許すのは謝られたときではなく、もう手を打ったと分かったときで、その順番は変えられない。報告する前に手を打っておくのが前提で、健司は報告の前にエレナに仕組みを作らせている。

言い換え

  • It's already fixed — here's how.
  • Done as of an hour ago. Want the detail?
  • The fix shipped. Let me show you.

本編35番で実際に使われています

4 対策を説明する場面。決意で終わらせたくないとき。

NGI will be more careful next time.

次回はもっと気をつけます。

気をつけるは仕組みではない。相手から見れば、同じミスが起きる確率は昨日と変わらない。

OKIt won't happen again, and here's why —

二度と起きません。理由を申し上げます。直訳「二度と起きません。そしてこれがその理由です」

再発防止を仕組みで語る型。肝は and here's why で、これが無いと単なる決意表明になる。人の注意力ではなく、作りを変えたことを示す。健司の説明は「数字はライブページから引く」「日付の無い出典は出せない」という二つの構造変更で、これなら健司が退職しても再発しない。そこまで来て初めて対策と呼ばれる。

言い換え

  • Here's the guardrail I added.
  • I changed the process, not just my behavior.
  • The system now blocks it. Let me show you.

本編37番で実際に使われています

5 報告や共有が遅れたとき。対策を説明したあとに添える。

NGI did not want to disturb you until I had a solution.

解決策ができるまでお騒がせしたくありませんでした。

配慮のつもりが、情報を握っていた理由の説明になる。相手には隠していたと聞こえる。

OKI should have flagged this earlier.

もっと早くお伝えするべきでした。直訳「私はこれをもっと早く旗を立てて示すべきでした」

何を怠ったかを具体的に認める型。謝罪ではなく、行動の遅れをピンポイントで名指しする。時刻まで出すと精度が上がり、健司は「11時に気づいて5時に報告した」と自分から言っている。ここまで具体的だと、相手はもうそれ以上追及する材料が無くなる。自分の弱点を先に正確に出しておくのが、追及を止める最短の方法。

言い換え

  • I sat on this too long.
  • You should have known at eleven, not five.
  • The delay was mine.

本編41番で実際に使われています

6 対策を完了したあと。個人に迷惑をかけた相手に対して。

NGPlease forgive me. I will do anything.

どうか許してください。何でもします。

許しを求めているだけで、相手の損害は何も回復していない。しかも anything は具体性がゼロ。

OKWhat can I do to make this right for you?

あなたに対しては、どうすれば取り返せますか?直訳「これをあなたにとって正しくするために、私は何ができますか」

被害を受けた本人に、回復の方法を聞く型。ここを推測でやると外れる。プリヤが求めていたのは謝罪でも埋め合わせでもなく、顧客のCTOに健司自身の名前でメールを出し、数字は自分のものだったと明記することだった。それは本人にしか分からない。for you を付けて、対象を組織ではなく個人に絞るのが肝。

言い換え

  • What would make this right?
  • Tell me what you need from me.
  • Is there anything I can do on your side?

本編44番で実際に使われています

発音のポイント should have

/ʃʊd hæv/ → /ʃʊdə/シュダ

I should have flagged this earlier.アイ・シュダ・フラッグド・ディス・アーリア

  • have が「ア」になる:完了の have は h が落ちて /ə/ ひと音に縮む。should have は2語で「シュダ」
  • 同じ形が並ぶ:could have はクダ、would have はウダ、must have はマスタ
  • 過去の反省は全部この音:ミスの場面で最も多く飛んでくる音の形

「シュッド・ハブ」と発音していると、自分の反省が相手に届きません。

本編スクリプト(全48発言)

英語を読んでから和訳で確認してください。印は KEY=覚える表現、NG=文法は正しいのに通らない英語、 SOFT=本音を包んだ遠回しの言い方です。

場面1 3か月前の数字34階 オープンフロア / 2:05 PM

1プリヤ

Kenji. The uptime figure in the Halvorsen deck. Ninety-nine point four.

健司。ハルヴォーセン向け資料の稼働率。99.4パーセント。

2健司

Yes. That's from headquarters.

はい。本社からのデータです。

3プリヤ

I read it out loud. In the room. To their CTO.

それを読み上げたの。あの部屋で。先方のCTOに向かって。

4健司

That's correct, isn't it?

合っていますよね?

5プリヤ

It was correct in March. It's ninety-six point one now. He had the status page open on his laptop.

3月時点ではね。今は96.1。彼はノートでステータスページを開いていたわ。

6健司NG通らない失敗①

I'm so sorry. I'm really sorry. It was the file that Tokyo sent me, and I assumed —

本当にすみません。本当に申し訳ありません。東京から送られてきたファイルで、てっきり——

謝罪の反復のあとに言い訳。この順番で信頼はさらに落ちる

7プリヤSOFT遠回し遠回し

Okay.

そう。

許してはいない。会話を終わらせただけ

8デビッド

Where else does that number appear?

その数字は他にどこに出ている?

9健司

...I would have to check.

……確認しないと分かりません。

10デビッド

Then that's the first thing. Not the apology. The blast radius.

ならそれが最初だ。謝罪じゃない。被害範囲だ。

11マーク

It's in the renewal deck for Brightpath. And the sales one-pager. I'd guess four places.

ブライトパスの更新資料に入ってる。あと営業の1枚もの。たぶん4か所だ。

12健司NG通らない失敗②

I am very sorry. I will be more careful next time.

大変申し訳ありません。次回はもっと気をつけます。

精神論。仕組みが変わらないので、相手は同じミスを想定し続ける

13マークNG通らない

Careful isn't a process, man. Nobody's mad at you. We just need the four places fixed.

気をつける、は仕組みじゃない。誰も怒ってないよ。4か所直せばいいだけだ。

気をつけますは、対策として数えられていない

場面2 8回の「すみません」34階 廊下 / 2:30 PM

14健司

Priya. May I apologize properly.

プリヤ。改めて謝らせてください。

15プリヤ

You've said sorry eight times in twenty-five minutes. I counted.

25分で8回「すみません」を聞いたわ。数えてたの。

16健司

In Japan, that is how we show it is serious.

日本では、それが重く受け止めていることの示し方なんです。

17プリヤKEY覚える核心

I know. I did the same thing for two years. Here, the eighth sorry makes you look less reliable, not more.

知ってる。私も2年やった。ここでは8回目の「すみません」は、頼りがいが増すんじゃなくて、減るの。

謝罪の回数は信頼の量にならない。むしろ減らす

18健司

Then what do they want?

では、何を求めているんですか。

19プリヤKEY覚える

Three things. What happened. What you're doing about it. And proof it's already moving.

3つよ。何が起きたか。それに対して何をしているか。そしてそれがもう動いているという証拠。

英語の謝罪はこの3点。感情はどこにも入らない

20健司

And the apology?

謝罪は?

21プリヤKEY覚える本日の型

Once. Four words. "That one's on me." Then never again in that conversation.

1回。4語よ。「That one's on me.」そのあとは、その会話では二度と謝らない。

それは私の責任です ― 責任の所在を一言で。1回だけ

22健司

Only once. That feels too light.

1回だけ。軽すぎる気がします。

23プリヤ

It's heavier. Once means you're finished apologizing and you're starting work.

逆に重いの。1回だけって、謝るのは終わって、もう仕事に入ったって意味だから。

24プリヤKEY覚える

And drop "Tokyo sent it to me." The second you explain who else touched it, the apology stops counting.

それと「東京から送られてきた」は捨てて。誰か他の人が触ったと説明した瞬間、謝罪は数えられなくなる。

言い訳が1つ入ると、謝罪はゼロになる

25健司

But it is true. The file really did come from Tokyo.

でも事実です。ファイルは本当に東京から来ました。

26プリヤKEY覚える

It's true and it's not yours to say. Let David find that out from the file history. From you it's an excuse.

事実でも、あなたが言うことじゃない。デビッドがファイル履歴から見つければいい。あなたの口から出れば、それは言い訳になる。

事実かどうかではなく、誰の口から出るかで意味が変わる

27健司

...Then what do I say about the four places?

……4か所については、何と言えばいいですか。

28プリヤ

Nothing. You fix them first, then you speak. Come back when it's done.

何も。先に直して、それから話すの。終わってから来て。

29健司

And to you? For the room, with their CTO?

あなたには? 先方のCTOの前での件は。

30プリヤKEY覚える

Ask me what would make it right. Don't guess.

どうすれば取り返せるか、私に聞いて。推測しないで。

被害の回復方法は、被害を受けた本人にしか分からない

場面3 仕組みで返すサラのデスク、そして給湯室 / 5:10 PM

31健司KEY覚えるやり直し

Sarah. The uptime number in three customer decks was wrong. That one's on me.

サラ。3件の顧客資料の稼働率が誤っていました。それは私の責任です。

1回だけ。言い訳なし。ここから先は全部、対策の話

32サラ

Go on.

続けて。

33健司KEY覚える

Here's what happened, and here's what I'm doing about it. A March figure carried into current decks. It appeared in four places, not three — I found the fourth an hour ago.

何が起きたかと、それに対して何をしているかを申し上げます。3月時点の数字が現行資料に持ち越されていました。3か所ではなく4か所です。4つ目は1時間前に見つけました。

事実→対策の二段構え。感情は入れない

34サラ

Status.

状況は。

35健司KEY覚える

All four are corrected and re-sent. I've already put a fix in place — let me walk you through it.

4件とも修正して再送済みです。再発防止もすでに入れました。ご説明します。

すでに動いていると示す。これが3点目の「証拠」

36サラ

Walk me through it.

説明して。

37健司KEY覚える

It won't happen again, and here's why — every customer-facing number now pulls from the live status page, and nothing ships without a date stamp on the source.

二度と起きません。理由を申し上げます。顧客に出す数字はすべてライブのステータスページから引くようにし、出典に日付が入っていない資料は出せない仕組みにしました。

精神論ではなく仕組みで語る。「気をつけます」との決定的な差

38サラ

Who built that?

それは誰が作ったの。

39健司

Elena, in forty minutes. I asked her before I came to you.

エレナです。40分で。ここへ来る前に頼みました。

40サラ

So you fixed it, you shipped the fix, and then you told me.

つまり、直して、対策も入れて、それから私に報告したのね。

41健司

Yes. I should have flagged it earlier — I found the March date at eleven and told you at five.

はい。もっと早くお伝えするべきでした。3月の日付に気づいたのは11時で、報告は5時になりました。

42サラKEY覚える

That's the only part I'd change. Six hours is a long time to be the only person who knows.

直すべきはそこだけね。自分だけが知っている状態で6時間は長い。

何を怠ったかを具体的に認める。時刻まで出す

43サラ

Otherwise — that's how it's done. Go talk to Priya.

それ以外は、やり方として正しい。プリヤのところへ行きなさい。

44健司KEY覚える

Priya. The four decks are corrected and re-sent. What can I do to make this right for you?

プリヤ。4件の資料は修正して再送しました。あなたに対しては、どうすれば取り返せますか。

相手の被害の回復に踏み込む。推測せずに聞く

45プリヤ

Email their CTO. From you, not from me. Say the number was yours and the correction is yours.

先方のCTOにメールして。私からじゃなく、あなたから。数字はあなたのもので、訂正もあなたのものだと書いて。

46健司

Sent forty minutes ago. You're copied.

40分前に送りました。あなたもCCに入っています。

47プリヤ

(checking phone) ...You put my name in the second line. "Priya presented the figure I gave her."

(携帯を見て)……2行目に私の名前がある。「プリヤは私が渡した数字を提示した」。

48プリヤ

That sentence is worth more than eight apologies. Thirty-nine days left. Don't waste them saying sorry.

その一文は、8回の謝罪より価値がある。残り39日。謝罪に使わないで。

練習

まずはキーフレーズ6本を、声に出して2回ずつ。息継ぎなしで言い切れるまで繰り返します。

口の形ザッ・ワンゾン・ミー

ロールプレイ

状況を読んで、自分の英語を口に出してから答えを見てください。

場面1自分の確認漏れで、顧客資料に誤った数字が載っていた。上司への第一声。キーフレーズ1

That one's on me. Here's what happened, and here's what I'm doing about it.

それは私の責任です。何が起きたかと、それに対して何をしているかを申し上げます。

場面2「で、再発防止は?」と聞かれた。決意ではなく仕組みで答えたい。キーフレーズ4

It won't happen again, and here's why — nothing ships without a date stamp on the source.

二度と起きません。理由は、出典に日付が無い資料は出せない仕組みにしたからです。

場面3対策は完了した。迷惑をかけた同僚に、回復の方法を聞きたい。キーフレーズ6

What can I do to make this right for you?

あなたに対しては、どうすれば取り返せますか。

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